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第5回 全体の流れ
-- 入力から後編集までの復習 --
前回までで、翻訳ソフトの使い方は一通り説明しました。今回は、入力から後編集まで通してやってみましょう。
基本操作説明
●原文の入力と一次出力
次の英文を、ポケトラエコの対訳エディタにコピー・アンド・ペーストしてください。
The first time I saw Brenda she asked me to hold her glasses. Then she
stepped out to the edge of the diving board and looked foggily into the pool; it
could have been drained, myopic Brenda would never have known it. She dove
beautifully, and a moment later she was swimming back to the side of the pool,
her head of short-clipped auburn hair held up, straight ahead of her, as though
it were a rose on a long stem. She glided to the edge and then was beside me.
"Thank you," she said, her eyes watery though not from the
water. |
入力できたら、スペルをチェックしましょう。また、第2文をあらかじめセミコロンで分割します。全部で6つの文になるはずです。ここで「翻訳」ボタンをクリックして訳文を出力します。[図1]
[図1]
●訳語変更と辞書の登録
さて、出力文をざっと眺めて訳語の変更と辞書登録をしましょう。
以下は参考です。必ずしもこのようにする必要はありません。
saw=会う(訳語変更--学習)/Brenda =ブレンダ(名詞登録、複数形は空欄)/stepped
out=大股で歩く(訳語変更--学習)/edge=端(訳語変更--学習)/diving
board=飛び板(名詞登録)/foggily=ぼんやりと(副詞登録)/myopic=近眼の(形容詞登録)/dove=飛び込む(訳語変更--学習)/short-clipped=短く刈りこんだ(形容詞登録)/auburn=鳶色の(訳語変更--学習)/glide=すべるように動く(訳語変更--学習)/watery=うるんだ(形容詞登録) |
辞書を反映した再翻訳は[図2]のようになります。構文解析の失敗から意味不明の訳になっているところがありますが、この時点ではあまりこだわらないでください。
[図2
●中間編集
まだ、訳文に手を入れてはいけません。「中間編集」が終わるまでじっと我慢してください。
[図3]を見てください。
[図3]
第1文はsheから文末までをフレーズ指定します。再翻訳するときれいに決まりました。
第2文は訳語変更。「のぞいた」を「のぞきこんだ」としてみました。
第4文は5つに分割しました。分割の際、接続詞は前の文につけておいたほうがうまくいくことが多いようです(She
dove beautifully, and
)。
最後の文も3つに分割しました。「from」を「による」と訳語変更しましたが前置詞は「学習」されません。
●後編集
さあ、それでは直接出力文に手を入れましょう。
語順は最初に直します。第3文の仮定法はMTではお手上げなので自由に書き換えてください。とりあえず[図4]のように直してみました。
[図4]
最後に、訳文のみをテキスト出力して、形を整えると次のようになりました。
最初に会った時、ブレンダはぼくに眼鏡を持っていてと頼んだ。それから、飛び板の端まで歩いていって、ぼんやりとプールをのぞきこんだ。たとえ水がなくても、近眼のブレンダには決してわからなかっただろう。美しく飛び込むと、すぐにプールの側へ泳いで戻った。短く刈りこんだ鳶色の髪の頭をまっすぐ前に上げて、まるで長い茎のバラのように。端まですべるように泳いで、それから私のそばに来た。「ありがとう」と言った彼女の目がうるんでいたが、水のためではなかった。 |
さて、Philip Roth の 「Goodbye
Colombus」から書き出しの部分を取り上げてみましたがいかがでしたか? 文芸ものでも下訳程度ならなんとかなりそうです。
MTを利用する場合、入力から後編集までの各ステップを手を抜かずにきちんと行うことが大切です。めんどくさいからと言って、一次訳をいきなり後編集しても効率はあがりません。 さて、次は少し技術的な例文でやってみましょう。 |
●下記の英文を、ポケトラエコの対訳エディタにコピー・アンド・ペーストしてください。
In order to make it possible for the fission process to be self-sustaining,
but regulated, and for the energy released to be transferred to a device which
converts it to the electrical form, a reactor system is constructed.
The
nuclear fuel, usually uranium, is fabricated into fuel elements. The typical
design for the fuel of a light-water power reactor involves the fuel in oxide
form. Where the fuel is uranium, the uranium dioxide is fabricated into pellets,
right circular sylinders approximately 19 mm high and 8 mm in
diameter. |
パラグラフは2つ、センテンスは4つです。[図5]
[図5]
文番号1は文の構造が複雑で長いので、かなり手を入れる必要がありそうです。
文番号4のsylindersはスペルミスです。訂正しておきましょう。
●一次出力の前に基本的な「設定」をしてみましょう。
「設定」ボタンをクリックすると設定画面が開きます。[図6]
[図6]
「カタカナを「・」でつなぐ」と「訳語を学習する」にチェックを入れます。
次に「辞書」タブをクリックして辞書設定の画面を表示します。[図7]
[図7]
「開く」ボタンをクリックすると「辞書を開く」画面が表示されます。[図8]
[図8]
新規に辞書を作成するので、ファイル名に「mt05」と入力して「開く」をクリックします。
新規に作成するか確認のメッセージが表示されるので「はい」をクリック。[図9]
[図9]
辞書設定が完了しました。[図10]
「辞書設定」画面の上にあるほうが優先となります。
[図10]
「設定」ボタンをクリックすれば設定が完了します。
●それでは一次出力してみましょう。
「翻訳」ボタンをクリックすると訳文が出力されます。[図11]
[図11]
●次は「訳語変更とユーザー辞書登録」です。
登録した語句は先ほど新規作成した「mt05」に記録されます。
それでは、下記を参考にして訳語の変更とユーザー辞書の登録をしてみましょう。もちろんこの通りでなくても結構です。
<文1>
fission
process=核分裂プロセス
self-sustaining=自己持続する
regulate=調節する
released=放出される
transfer=移送する
form=形
construct=組み立てる
<文2>
nuclear
fuel=核燃料
fuel elements=燃料エレメント
<文3>
light-water power
reactor=軽水発電用原子炉
typical=代表的な
design
=デザイン
involve=含む
<文4>
uranium
dioxide=二酸化ウラン
pellets=ペレット
right circular
cylinders=正円柱体 |
再翻訳すると[図12]のようになります。
[図12]
●中間編集
ざっと中間編集したのが[図13]です。
[図13]
特に<文1>はうまく訳出できていません。
まず、in order to
が曲者で、ちょっと文を分割すると「という命令での」などといった訳が出てきてしまうので、そのままにして後編集で直接修正することにします。
特にこの例文では、
In
order to make it possible for the fission process to be self-sustaining, but
regulated,と、butとregulatedの間にto beが省略されている上に、次の
and for the energy released to
be 〜にはandとforの間にin order to make it
possibleが省略されているわけですから、MTの手に負えません。
●それでは後編集です。
直接訳文に手を入れました[図14]。どのように修正したかは[図13]と見比べてください。
[図14]
●訳文のみをテキスト出力して細かいところを修正します。
段落も原文と合わせます。
核分裂プロセスは自己持続するが調節され、放出されるエネルギーを電気の形に転換する装置に移送できるように原子炉システムは組み立てられる。
核燃料は通常はウランであり、燃料エレメントに作られる。軽水発電用原子炉の燃料に対する代表的なデザインは、酸化物の形の燃料を含んでいる。燃料がウランの場合、二酸化ウランがペレットに製造され、それは正円柱体で高さ約19mm、直径約8mmである。 |
練習問題
今回の練習問題は、パトリシア・コーンウエルの「POSTMORTEM(検屍官)」から冒頭の部分を取り上げました。楽しんで取り組んでください。講談社文庫から相原真理子訳で日本語版が出ています。参考にして頂いて結構です。 人名表記は、Dr.
Scarpettaはドクター・スカーペッタ、Pete
Marinoはピート・マリーノ、としてください。
●さて、今回は総合練習なので、下記の手順に従ってファイルを作成してください。
(1)以下の例文をポケトラエコの対訳エディタにコピー・アンド・ペーストしてスペルミスがないかチェックする。 (2)「設定」を行う。(ユーザー辞書を新規作成する) (3)一次出力し、「一次出力」という名前を付けて保存する(ポケトラエコ形式)。 (4)訳語変更、辞書登録、中間編集をして「中間編集」という名前を付けて保存する(ポケトラエコ形式)。 (5)訳文に直接手を入れて後編集して出来上がったら「後編集」という名前を付けて保存する(ポケトラエコ形式)。 (6)訳文のみをテキスト出力して、ワープロまたはテキストエディタで最後の仕上げをして「最終訳」という名前をつけて保存する(テキスト形式)。 |
It was raining in Richmond on Friday, June 6. The relentless downpower,
which began at dawn, beat the lilies to naked stalks, and blacktop and sidewalks
were littered with leaves. There were small rivers in the streets, and newborn
ponds on playing fields and lawns. I went to sleep to the sound of water
drumming the slate roof, and was dreaming a terrible dream as night dissolved
into the foggy first hours of Saturday morning. I saw a white face beyond
the rain-streaked glass, a face formless and inhuman like the faces of misshapen
dolls made of nylon hose. My bedroom window was dark when suddenly the face was
there, an evil intelligence looking in. I woke up and stared blindly into the
dark. I did not know what had awakened me until the telephone rang again. I
found the receiver without fumbling. "Dr. Scarpetta?" "Yes," I reached
for the lamp and switched it on. It was 2:33 A.M. My heart was drilling through
my ribs. "Pete Marino here. We got us one at 5602 Berkley Avenue. Think you
better come." The victim's name, he went on to explain, was Lori Petersen, a
white female, thirty years old. Her husband had found her body about half an
hour earlier. |
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