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翻訳ソフト試用レポート PC-Transer 翻訳スタジオ2007

PC-Transerがインターフェースを大幅に変更し、「翻訳スタジオ」として登場してから3度目のバージョンアップ版「PC-Transer 翻訳スタジオ2007」が2006年10月6日に発売されました。ほぼ毎年バージョンアップしているPC-Transerとしてはバージョン14になります。

翻訳スタジオが登場した時には、一般的にあまり使われない機能を外し、その代わりにインターフェースを強化しましたが、最初のバージョンでは便利な機能まで外してしまったという印象がぬぐえませんでした。また、辞書の連携などの面でも改良の余地がだいぶ残されていました。このあたりは新バージョンでどうなっているのでしょうか。

それでは早速、PC-Transer 翻訳スタジオ2007の機能を、追加あるいは強化された部分を中心に見てみましょう。

PC-Transer 翻訳スタジオ2007製品紹介ページ
http://www.crosslanguage.co.jp/products/studio2007/

翻訳エンジン

翻訳ソフトで最も重要なのはもちろん翻訳エンジンです。
カタログでは「構文トランスファー+意味マッチングによる高速・高精度 英日・日英翻訳エンジン」となっていますが、一口で言うと、構文解析を行う従来の方式に加えて、辞書に付加された意味情報を手がかりに、より相応しい訳文を出力する方式だということです。
とはいっても、こればかりは実際に訳文を出力させて見るしかないでしょう。

試しに Voice of America のWEBページから:
原文 出力文
President Bush has put off the announcement of changes in his Iraq policy until sometime in early 2007. 2007年前半のあたりまで、ブッシュ大統領は彼のイラクの政策における変更の発表を延期した。

原文 出力文
VOA's Paula Wolfson reports from the White House, the president is continuing to seek input from experts inside and outside the U.S. government. VOAのポーラ・ウォルフソンはホワイトハウスから報告する、大統領は米国政府の内外で専門家から情報を求め続けている。
どうですか? 「翻訳」のレベルにするには後編集が必要ですが、十分に意味がわかる訳文が出力されています。これならリライトする気になるでしょう。

辞書

基本語辞書:英日: 1,050,000語 / 日英: 1,240,000語
日外アソシエーツ180万語科学技術辞書:英日: 900,000 / 日英: 900,000

これだけの膨大な辞書に加えて、スタンダード版には7分野の専門語辞書(英日: 320,000語 / 日英: 330,000語)、プロフェッショナル版には27分野の専門語辞書(英日: 1,212,000語 / 日英: 1,319,000語)が搭載されています。

因みに、最近の翻訳ソフトは以前に比べて翻訳成功率がかなり高まっていますが、これは、たゆまぬ辞書の開発がその理由の1つだと言えるでしょう。さすがにこれだけの語数があれば原文のまま出力されることも少なくなります。「未知語リスト出力」を行ってもスラングや固有名詞ぐらいしかリストアップされません。

ただ、ここで注意しなければならないのは、辞書の内容です。ひとつの見出し語に対する訳語が豊富にあるかどうかによって使い勝手が大きく変わってきます。もちろん、出力されるのは一つの訳語ですので、文脈に合わない場合は訳語変更機能で別の訳語に変更するわけですが、訳語の数が多いほど選択肢が増えます。選択肢が少ない場合は必然的に辞書登録をする頻度が高くなり効率が落ちます。この点、翻訳スタジオの訳語はかなり充実しています。

ただ、やたらに訳語を増やすだけではあまり意味がありません。できるだけ適切な訳語を出力する仕組みが必要です。そこで、訳語とともに文法情報も書き込むことができるようになっています。例えば前出の文章でchangesの訳語リストを見ると、「(〜における)変更 <(at/in ACTION)>」となっています。<図1>

<図1>changesの訳語リスト

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これはchangeの後ろにatかinの前置詞句が来たときは「〜における変更」と訳出するように指定されているということで、「ACTION」は意味素性と呼ばれる意味のカテゴリーを表す記号です。このように、「changes in his Iraq policy」が「彼のイラクの政策における変更」という訳は、「in」を場当たり的に「における」と訳しているのではないことがわかります。

対訳エディタ

翻訳ソフトを翻訳作業に活用するには「対訳エディタ」の使い勝手が最も重要です。使い勝手が悪く、ストレスを感じるようでは誰も使わないでしょう。その点PC-Transerの対訳エディタは従来から極めて使いやすいと評判でしたが、翻訳スタジオ2007になっても使いやすさはそのまま受け継がれています。

  • 原文あるいは訳文の上にマウスカーソルを当てるだけで対応する語句が赤文字になります(スタジオUから付加された機能)
  • 原文あるいは訳文の任意の語句をダブルクリックすると対応する語句が反転表示されます
  • そのままもう一度クリックすると訳語リストが表示されます
  • そのまま訳語リストの任意の訳語をクリックすると訳文がその訳語に置き換わります
つまり、カーソルを当てながら不適切な訳語を探して、見つかったらトリプルクリックし、適切な訳語をクリックするだけでどんどん訳文を向上させていくことができます。訳語変更を学習する機能をオンにしておけば、クリック4回の労力でさえだんだん減少して行きます。

さらに新バージョンでは、訳語、辞書、翻訳メモリの各ペインと連携し、翻訳ソフトとしての総合力を高めています。<図2>

<図2> 充実したインターフェース

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翻訳スタジオの対訳エディタのすごさはここでは紹介しきれないので(翻訳ソフト活用のノウハウそのものになります)、後日、改めて詳しく見てまいりましょう。

翻訳スタイル登録

翻訳設定をカスタマイズした場合、その設定情報を登録しておく機能は以前からありましたが、今度のバージョンでは、スタイル登録機能が強化されました。<図3>

登録したスタイルは、対訳エディタのプルダウンメニューから選択して簡単に切り替えできるようになりました。複数ジャンルの文書を訳す必要のある人には特に便利な機能です。

<図3>スタイル登録画面

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ユーザー辞書ブラウザ

以前はユーザー辞書の登録情報を一覧したいときには一旦テキスト形式のユーザー辞書ソースに書き出す必要がありましたが、「ユーザー辞書ブラウザ」のおかげで辞書の内容を簡単に一覧表示できるようになりました。<図4>

気になる訳語があった場合、その上でダブルクリックすれば、辞書登録画面が開き簡単に修正できます。ユーザ辞書のメンテナンスが大変楽になりました。
<図4>ユーザー辞書ブラウザ

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翻訳メモリ

もはや「翻訳メモリ」を持たない翻訳ソフトは業務用翻訳ソフトとは言えません。PC-Transerは他の翻訳ソフトに先駆けて、1999年末のV6で「翻訳メモリ」機能を搭載しました。

デフォルトの訳文生成方法では、先ず翻訳メモリに登録されている対訳データベースを検索し、マッチするものがなければ機械翻訳で訳文を生成するようになっています。翻訳メモリの検索方法には、完全一致、文型一致、類似文検索の3つがあります。

実際に使ってみると、よほど定型的な文書でないと翻訳メモリにマッチしないことがわかります。自動的な「訳文生成」に対する翻訳メモリ機能に過度の期待をせずに、「翻訳メモリ」ペインで類似文検索をし、マッチした訳文を参考にして翻訳を進めるという使い方が実用的です。その場合も、翻訳メモリの設定で「一致率」を50%程度に下げて使うのがコツです。さらに、コンコーダンス的な活用法として「キーワード検索」は大変便利な機能です。<図5>

<図5>「翻訳メモリ」ペイン

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IE/オフィスアドイン翻訳

これまでの、Word、Excel、PowerPoint、Internet Explorerのレイアウトを保ったまま翻訳するアドイン機能は一見便利なようで、訳文を修正して商品レベルの翻訳に仕上げる作業にはあまり役に立たない機能でした。今度のバージョンでは、翻訳エディタで設定した翻訳スタイルや翻訳メモリが反映されるようになりました。

例えば、Wordのレイアウト情報を残した上書き翻訳の場合、事前に対訳エディタで翻訳を済ませて翻訳メモリに登録してから、Wordのアドイン翻訳を行い、最終的に微調整するという使い方をすれば、翻訳実務にも十分対応できそうです。<図6>

<図6>Wordのアドイン翻訳

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上図の最初の訳文はデフォルトのもの。後の訳文は翻訳メモリを設定したもの。翻訳メモリの訳文がきちんと反映されています。

復活した便利な機能

「フィルタ」機能
ファイルを読み込む際、あるいは保存する際に検索置換を実行できます。予め検索置換用のファイルを作成しておいて一括で置き換えることができます。正規表現も使えるので工夫次第ではかなり高度な置換ができます。うまく使えば定型的な文章に対する「自動前編集」「自動後編集」を実現できるでしょう。
「スクリプト」機能
「原文訳文読み込み」は対訳ファイル作成に必須の機能です。原文と訳文のファイルを対訳エディタのそれぞれのウインドウに読み込みます。例えば英文ファイルと日本文ファイルがある場合、この機能を使って左側に英文を、右側に日本文を読み込みそれぞれ対応をチェックして対訳ファイルを作成して、翻訳メモリに一括登録するという使い方ができます。
これらの機能はかなり翻訳ソフトを使い込んだ上級者向けのものですが、翻訳実務では大変役に立つものです。詳し使い方は後日改めて説明したいと思います。

クマぞーがPC-Transerを使い始めたのはバージョン5からですが、実のところ、機能の点ではPC-Transer V11が最も充実しており、これまでV11をメインで使ってきました。今度のPC-Transer 翻訳スタジオ2007では、一度外された便利な機能が復活しています。さらに細かい改良が加えられてずいぶん使い勝手がよくなりました。まだ、PC-Transer V11を使っているヘビー・ユーザーも翻訳スタジオ2007なら納得するのではないかと思います。


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