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MT活用英文法

翻訳ソフトがどうやって「翻訳」するか皆さんはご存知でしょうか。
実は、人間がするのと同じような手順で翻訳しているのです。それも、受験生の英文和訳に近いと言ってもいいかもしれません。
辞書を引いて単語の品詞を判断して、その並びから文全体の構造を解析します。同時に、訳語の候補を挙げます。
次に、訳語をつなぎ合わせて訳文を組み立てます。このとき、英語の構文を日本語の構文にうまく移し変えることができれば、自然で読みやすい良い訳となりますが、たとえ直訳であってもきちんと訳せていれば「学校英語」では丸をもらえます。
現在の翻訳ソフトでは、普通は「学校英語」の訳文にしかなりません。そこで、商品レベルの「翻訳」にするにはリライトが不可欠ということになります。

翻訳ソフトがベースにしている翻訳ルールは多かれ少なかれ学校で習う英文法を参考にしています。ですから、翻訳ソフトを使いこなすには基本的な英文法の知識が不可欠です。さらに、品質を上げるためには日英文の構造の違いを克服する変換ルールが必要になります。

このページでは、どうすれば翻訳ソフトに正しい訳文を出力させることができるか(中間編集)、また、正しいけれども直訳で読みにくい訳文を簡単に自然な訳文に修正するにはどうしたらよいか(後編集)、をMT活用英文法という視点から考えてみたいと思います。 

名詞を読みほどく

名詞中心の英語をそのまま翻訳すると、動詞中心の日本語ではいかにも直訳という感じがします。翻訳ソフトは原則として品詞の変換を行わないので、訳文は名詞がそのまま出てきます。ただ、この傾向は一定しているので、訳文だけを見て修正できるというメリットになります。
出力はポケトラエコです。若干、訳語変更しているものがあります。


(1)主語を表す所有格

例文1

原文: Tom's refusal to help me was a great disappointment.
MT訳: 私を助けることに対するトムの拒絶は、ものすごい失望であった。
後編集: トムが助けてくれないので、私は大変失望した。

例文2

原文: We noticed Jimmy's absence from the party.
MT訳: 我々は、パーティーをジミーの休むことに気がついた。
後編集: 我々は、ジミーがパーティーに出席していないことに気が付いた。

例文3

原文: There is no need for your attendance at the meeting.
MT訳: 会議へのあなたの出席の必要が、ない。
後編集: あなたが会議に出席する必要はない。

例文4

原文: Her speedy recovery from the illness amazed the doctors.
MT訳: その病気からの彼女の速やかな回復は、医者を驚かせた。
後編集: 彼女が病気から速く回復したので、医者たちはびっくりした。


(2)of+名詞---主格関係

例文5

原文: Bobby married without the knowledge of his parents.
MT訳: ボビーは、彼の両親のその認識なしで結婚した。
後編集: ボビーは、両親が知らないうちに結婚した。

例文6

原文: Betty baked a big cake during the absence of her mother.
MT訳: ベティは、彼女の母の不在の間、大きいケーキを焼いた。
後編集: ベティは母がいない間に大きなケーキを焼いた。


(3)of+名詞---目的関係

例文7

原文Her application of the rule to this case was quite natural.
MT訳: この事例へのその規則の彼女の適用は、全く自然だった。
後編集: 彼女がその規則をこの事例に適用したのは、全く自然なことだった。

例文8

原文: The knowledge of her safe arrival delighted her family.
MT訳: 彼女の安全な到着の情報は、彼女の家族を喜ばせた。
後編集: 彼女が無事に到着したということがわかって家族は喜んだ。


無生物主語の構文

原因・結果の意味を含む無生物主語の構文は、そのまま直訳したのでは意味の欠落が大きくなってしまいます。後編集できちんと補うことが大切です。

(1)無生物主語の処理の原則

例文1

原文: A few minutes' walk brought me to the station.
MT訳:2、3分の歩行は、駅に私を連れてきた。
後編集:2、3分歩くと、駅に着いた。

例文2

原文: The noise in the street kept him awake all night.
MT訳:通りの中のその雑音は、一晩中、彼を起きているままにしておいた。
後編集:通りがうるさくて、彼は一晩中眠れなかった。

例文3

原文: A little care would have prevented him from injuring himself.
MT訳:少しの注意は、彼が彼自身を負傷させるのを防止した。
後編集:ちょっと注意すれば、彼はケガをしなかっただろう。


(2)動詞が含まれている場合(無生物主語の名詞に動詞の観念が含まれている)

例文4

原文: His father's sudden death compelled him to give up school.
MT訳:彼の父の急死は、彼に学校をあきらめることを強要した。
後編集:父が急死したので、彼は学校をやめざるをえなかった。

例文5

原文: His indistinct speech made it impossible for us to understand him.
MT訳:彼の不明瞭な話し方は、我々が彼を理解することを不可能にした。
後編集:彼が、はっきりしゃべらないので、何を言っているのかよくわからなかった。

例文6

原文: Our inquiry revealed a new fact.
MT訳:我々の調査は、新しい事実を明らかにした。
後編集:調べてみると、新しい事実が明らかになった。

例文7

原文: The barking of the dog frightened the burglar away.
MT訳:その犬のほえることは、泥棒を脅して追い払った。
後編集:犬がほえたので、泥棒はあわてて逃げ出した。


(3)動詞を補ってやるべき場合

例文8

原文: Illness prevented him from coming to the party.
MT訳:病気は、彼がそのパーティーに来るのを妨げた。
後編集:病気のために、彼はパーティーに出られなかった。

例文9

原文: What led you to this conclusion?
MT訳:何が、あなたをこの結論に導いたか?
後編集:どうやってこの結論に達したのですか?


(4)仮定法が含まれている場合

仮定法のニュアンス自体、翻訳ソフトでは訳出できません。

例文10

原文: Quick treatment would save his life.
MT訳:速い処置は、彼の人生を救う。
後編集:処置が速ければ彼の命は助かるだろう。

例文11

原文: A few words of encouragement would have moved the students to study harder.
MT訳:激励の2、3の語は、学生をより一生懸命に勉強する気にさせた。
後編集:少し励ましてやったら、学生たちはもっと一生懸命に勉強していただろう。



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